施政方針(令和6年第1回由利本荘市議会定例会)

ページ番号1009607  更新日 2024年2月16日

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令和6年第1回市議会定例会(令和6年2月16日開催)より

写真:施政方針

 本日、第1回市議会定例会の開会にあたり、令和6年度の当初予算案及びその他の案件についてご審議をお願いするものでありますが、その基本的な考え方と施策の概要を述べさせていただきます。

 猛威を振るった新型コロナウイルス感染症の法律上の位置付けが、昨年5月、5類に移行し、3年あまりにわたったコロナによるさまざまな制約から解放され、「有事」から「平時」へと大きく「かじ」が切られて、平常に戻りつつある一方、世界的に見ると、まもなく2年を迎えるロシアによるウクライナへの侵攻は長期化の様相を呈しているほか、中東においても緊張の火種が燻るなど、国際社会の緊張の高まりとともに、食料品をはじめとした生活必需品、原油や天然ガスなどのエネルギー価格の高騰も相まって、コロナ禍からの経済回復に大きな足かせとなっている状況にあります。

 また、私たちの身の周りでも、昨年は夏の局地的な豪雨や長期にわたる猛暑などの異常気象、そして、クマの市街地への度重なる出没など、これまで経験したことのない自然の猛威にさらされたところであり、今後は、想定を超えたさまざまな事象への備えがこれまで以上に求められることを念頭に置く必要があります。

 こうした社会経済情勢の変化の中にあっても、電子部品デバイスを中心とした製造業の集積が地域経済を牽引する一方、広大な森林や多彩な作物を育む豊かな農地を有する本市は、再生可能エネルギーの全国有数の供給地となりうるほか、食料供給や二酸化炭素の吸収など、時代のニーズを先取りした分野で多くの優位性を備えていることから、こうした資源を最大限に活用して、今後、各種施策を展開してまいりたいと考えております。

 さて、国が示した令和6年度の地方財政計画では、前年度を約1兆6,100億円上回る約93兆6,400億円の規模としているほか、地方交付税の総額を、自治体に交付する「出口ベース」で、前年度比3,060億円増、率では1.7%増となる18兆6,671億円としております。

 また、臨時財政対策債については、前年度比5,402億円減、率では54.3% 減となる、4,544億円と大幅に抑制しています。

 地方税や地方交付税などの一般財源総額は、交付団体ベースで前年度を5,545億円上回る62兆7,180億円が確保され、社会保障関係費や人件費の増加が見込まれる中、「こども・子育て政策の強化」などの重点項目に対して地方財政措置の拡充がされております。

 一方、私にとって任期最後の本格予算となる令和6年度の当初予算については、一般会計総額で486億600万円としたところであり、歳入の基幹である市税については、定額減税実施による減収を考慮し、前年度比約1億5,000万円減の約80億円、地方交付税と臨時財政対策債を合わせた合計で、前年度比約1億8,000万円減の約174億8,000万円、このほか、譲与税等を含めた主要一般財源の総額を、前年度比約9,000万円増となる約284億9,000万円と見込んだところであります。

 限られた財源ではありますが、本市の将来の成長発展につながる、たとえ小さな芽であっても大きく育てるとの視点に立って取り組んでいくことが重要であり、また、若者、女性の地域定着と回帰を図ることが人口減少克服の大きな鍵になることから、本市の持続的な発展に向け令和6年度は、最重要課題となっている人口減少の克服など、本市が直面するさまざまな課題の解決を図るため、3つの取り組みを施策の柱に据え、

 1つ目は、若者・女性の地域定着と切れ目のない子育て支援

 2つ目は、大規模プロジェクトなどを活かした関係人口の拡大と地域産業の振興

 3つ目は、誰もが安全安心に暮らせるまちづくり

の項目に対して、積極的に予算配分を行ったところであります。

 令和6年度も、前年度を上回る多額の基金繰入を見込むなど非常に厳しい財政状況でありますが、国、県の補助制度の活用や、過疎債など交付税措置の高い有利な地方債を活用しながら、市民の福祉の向上と安定的で質の高い行政サービスを持続的に提供していくことを財政運営上の基本的な考え方として、予算編成にあたったところであります。

 今後、本市財政が健全性を維持しつつ、持続可能性を確保していくためには、行財政改革の取り組みが、これまで以上に強く求められることをあわせて申し上げさせていただきたいと思います。

 それでは、令和6年度において展開する施策の概要についてご説明いたします。

 

 1点目は、「若者・女性の地域定着回帰と切れ目のない子育て支援」であります。

 若者や女性の定住を図る上で、専門的な学びや技術を活かせる就業の場の有無は重要なポイントとなるものであり、その点において地方は大都市圏と比較して、大きなハンディキャップを抱えております。

 こうした、都会で身につけたスキルなどを、本市で活かして働きたいというニーズに応えるための選択肢として、就業の場の確保に加え、起業にチャレンジできる環境の整備が重要であることから、就任以来、事業承継を含めた起業支援施策の充実を図ってきたところであります。

 起業件数については、着実に増えており、これまでの取り組みに一定の手応えを感じておりますが、令和5年度から実施したITに特化した起業支援制度を継続するほか、県や金融機関などが行う、若者や女性向け融資を対象に、最大5年間、利子の全額を補給する支援制度を新たに設けるなど、「起業するなら由利本荘で」をさらに浸透を深めていけるよう、起業する職種や事業内容に応じてきめ細やかに支援してまいります。

 若者や女性がいきいきと地域で活躍できる場の創出につなげる取り組みを推進するため、第2期を迎えた「由利本荘プロモーション会議」については、旧市町の地域単位での事業の企画立案に加え、新たに地域の枠を越えた広域的な企画立案についても対象として、より広い視点からの地域課題の解決につなげてまいります。

 さらに、第1期のメンバーが継続的に取り組む企画をフォローアップし、地域づくりへの意欲の定着化を図るとともに、持続的、安定的に取り組んでいけるよう支援してまいります。

 「アベイバプロジェクト」については、引き続き、若者を対象としたイベントや交流会の企画開催や情報発信を行い、若い世代のネットワークづくりと出会いの場の創出に向け取り組んでまいります。

 また、結婚に伴う新生活を応援するため、新居の家賃や引越費用等を支援する「結婚新生活支援事業補助金」を継続し、経済的負担を軽減することにより、結婚を希望する若者を後押ししてまいります。

 妊産婦や子育て世帯に対する相談支援につきましては、「子育て世代包括支援センター」や「子ども家庭総合支援拠点」を核とした各機関の協働による見守りや面談、訪問等により、妊産婦の体調や子どもの成長、個々の家庭の置かれた状況などに応じ、相談者に寄り添った丁寧できめ細かな対応に努めてまいります。

 また、第2子以降の出生に対しましては、国、県の給付金に加え、市独自の「子育て支援金」を給付するほか、国の児童手当や児童扶養手当の拡充にも適切に対応するとともに、高校生世代までの子どもの医療費無償化を継続することにより、妊娠から子育てまでを経済的に切れ目なく支えてまいります。

 次に教育施策につきましては、「総合教育会議」を通して、教育委員会と方向性を共有しながら、「教育の振興に関する施策の大綱」の最終年度として、よりよい教育行政の推進に努めるとともに、これからの教育に対応する新たな大綱の策定に取り組んでまいります。具体的な教育施策につきましては、この後、教育長が教育方針で述べますが、学校施設など教育環境のハード整備と、本市独自の教育モデル「ゆりほんICT子供の学びアップデートプラン」などをはじめとするソフトの力で、児童生徒の健やかな学びを多方面から支えてまいります。

 

 2点目は、「大規模プロジェクトを活かした関係人口の拡大と地域産業の振興」であります。

 本市では官民連携による大規模プロジェクトである、「一番堰まちづくりプロジェクト」をはじめ、「鳥海ダム建設」、「洋上風力発電施設整備」、「出羽幹線整備」など多くのプロジェクトが動き出しており、これを千載一遇のチャンスと捉え、本市経済のさまざまな分野へ幅広く効果が波及するよう、市として地元企業の受注機会の確保などに取り組んできたところであります。

 今後とも、地元企業の参入支援策として、イノベーション補助制度を活用した新たな分野への進出を支援する施策を継続するほか、個人レベルでの技術や技能の底上げ対策として、資格取得支援についても引き続き推進してまいります。

 一番堰まちづくりプロジェクトについては、昨年9月にTDK社員寮351戸が完成し、現在、280人が入居しているほか、社会福祉法人「中央会」による老人福祉施設についても順調に工事が進んでおり、本年4月に開所の予定ときいております。

 一方、医療施設の整備については、昨今の資材価格などの高騰の影響もあって、建築計画の見直しが余儀なくされ、完成については当初計画よりはズレ込む見通しと伺っております。

 このエリア周辺には、統合小学校の整備も予定されており、通勤、通学、物流を支える基盤として、「市道一番堰薬師堂線」及び「市道薬師堂25号線」の整備を進めるとともに、水道、ガスなどのインフラ施設についてもあわせて推進してまいります。

 新たな観光スポットと洪水調節として期待されている「鳥海ダム」につきましては、資材高騰による事業費の増大のほか、国の働き方改革などにより、工期が4年延期となり、完成が令和14年度の予定となりましたが、今年度には、「ダムサイト」の本体工事に着手するなど、工事もいよいよ本格化してまいります。

 今後は、観光アクセス道路としての役割が期待される「市道百宅線」の付け替え工事が円滑に進むよう、ダム工事事務所と協議していくほか、新たな観光スポットとなるダム湖と鳥海山を眺望できる展望スペースの設置に向けて、関係機関と必要な調整を図ってまいります。

 再生可能エネルギー関連につきましては、現在、進められている着床式洋上風力発電事業について、環境影響評価手続きのほか、送電線ルートなどの検討が進められております。とりわけ、陸上送変電設備工事については、この3月にも地元企業への説明会を開催する予定と伺っており、商工会を始めとした各種団体等と協力しながら、多くの地元企業が受注機会を得られるよう取り組んでまいります。

 さらに、昨年10月には経済産業省より、本市沖を含む秋田県南部沖が、浮体式洋上風力発電の実証候補区域に選定されたところであり、最終的に全国2箇所程度と言われている実証区域に選定されることを念願しております。

 次に観光関係についてでありますが、昨年5月、新型コロナウイルス感染症の法律上の位置付けが5類になり、海外渡航の制限が解除された結果、昨年の訪日外国人客数が年間2,500万人を突破するなどインバウンド需要の回復が鮮明になっており、大手旅行会社からも、今年は過去最高の2019年を超える3,300万人になるとの予測が発表されております。

 消費形態も買い物などのモノ消費から、体験などを重視するコト消費へとシフトしており、県や旅行エージェントなどと連携を図り、そうした変化にしっかりと対応しながら、これまで以上に積極的な誘客活動を展開してまいります。

 また、こうした変化に的確に対応し、充実した観光施策の展開に向け、内外の有識者を招き、「(仮称)由利本荘市観光フォーラム2024」を開催し、本市のこれからの観光の将来像について意見交換するとともに、本市のコンテンツに磨きをかけながら関係人口の創出などにつなげてまいります。

 観光振興につきましては「鳥海山」、「法体の滝」周辺の魅力向上を図りながら、アクティビティを取り入れた体験型ツアーを中心とした滞在型観光に力を入れ「鳥海山を核とした広域観光振興」に取り組んでまいります。

 その中心となる「鳥海ダム」については、完成予定時期が延期されましたが、それを逆手にとって、観光誘客の好機の拡大と捉え、工事現場見学などのインフラツーリズムや、ダム湖に沈みゆく百宅地区の歴史を学ぶ「百宅さと歩き」などのコンテンツを売り込んでいくほか、本市の「水力発電」や「陸上風力発電」の施設に加え、今後建設される「洋上風力発電」を新たな観光素材として活用できるようさまざまな角度から検討してまいります。

 「ユネスコ世界ジオパーク」の認定を目指す「鳥海山・飛島ジオパーク」につきましては、ジオパーク推進協議会を中心に3市町と連携を図りながら、令和6年の日本ジオパーク再認定に取り組むとともに、令和8年度の世界認定を目指し、市内外へのPR活動を継続してまいります。

 観光需要が冷え込む冬季対策として、今年12月から来年2月までの3カ月間、JR東日本が自治体と協力して展開する大型観光キャンペーンの「重点販売地域」に本県が指定されたことから、それをテコに本市ならではの魅力ある観光コンテンツを商品化し、観光客の取り込みを図ってまいります。

 「多世代交流」と「木育推進」の拠点である「鳥海山 木のおもちゃ館」と「あゆの森公園」につきましては、さらなる利用促進を図るとともに、木育活動及び木育事業の拠点施設として各種事業を推進してまいります。

 芸術文化の振興につきましては、多様な芸術文化活動が各地域で展開されるよう支援し、賑わいのあるまちづくりにつなげていくほか、文化交流館「カダーレ」を中心に、市民が優れた芸術に直に触れることのできる場を創出いたします。

 スポーツ振興につきましては、「躍動と活力のあるまち」、「市民が主役のスポーツ立市」を力強く進めながら、市民一人ひとりが、生涯にわたり豊かなスポーツライフを実現できる環境づくりに取り組んでまいります。

 また、今年8月には、本県で東北総合スポーツ大会が開催され、本市ではバレーボール、ソフトボール、ライフル射撃、銃剣道の4競技が行われる予定となっていることから、各競技団体と連携しながら円滑に運営されるよう支援するほか、こうした事業の推進役となる「一般社団法人 由利本荘市スポーツ協会」のさらなる組織強化を図るとともに、競技団体やスポーツ少年団への支援の強化を図ってまいります。

 スポーツ施設につきましては、本市の「スポーツ振興計画」に基づき利用環境の向上を図るほか、特に、「ナイスアリーナ」については、スポーツ振興の拠点施設として、施設の特徴を生かした事業を開催するとともに、全国規模の大会やスポーツ合宿等の誘致活動を進めてまいります。

 また、今年で3回目の公演となる氷上のミュージカル「ディズニー・オン・アイス」など、今後ともこうしたエンターテインメントやイベントを積極的に招致し、関係人口の拡大による地域経済の活性化を図るとともに、本市の魅力の情報発信に努めてまいります。

 本市産品の売り込みにつきましては、首都圏企業や団体との連携協定を基軸とした販売会、展示会でのPR活動を積極的に展開するほか、SNSを活用して「由利本荘」を全国に発信し、新規取引先の開拓など、販路拡大に努めるとともに、本市産品のふるさと納税の返礼品としての認知度向上を図ってまいります。

 そのため、業務委託事業者と連携しながら、返礼品の拡充や新規事業者の発掘を進め、ふるさと納税受け付けサイトやSNSを活用するなど、効果的な広告展開により本市や市産品の魅力を発信することにより、寄附金の増額を目指してまいります。

 テレワークに関する企業の取り組みの進展や、ワークライフバランスへの関心の高まりにより、「転職なき移住」、ライフステージに合わせた「短期移住」など、移住形態は、年々多様化してきております。そうした状況を踏まえながら、移住の促進にあたっては、引き続き「仕事」や「住まい」など、相談者に寄り添った移住相談を丁寧に行っていくほか、都市部で本市独自の移住イベントを開催するとともに、県等が開催する移住イベントにも積極的に参加し、移住希望者の掘り起こしに努めてまいります。

 また、首都圏の子育て家族と地元住民との交流が呼び水となり、移住、関係人口の拡大、地域のにぎわいの創出などにもつながっている「ゆりほん保育園遊学」については、実施保育園、実施時期、受入れ家族数等、取組内容を拡充するほか、都市部の10代から20代のいわゆる「Z世代」を対象に、地方で働く、遊ぶ、交流する「若者地方交流体験」に地域住民、関係団体等と一体となって取り組んでまいります。

 今年度は、こうしたお試し移住体験事業の取り組みを市のみならず、参加者、そして地元住民からも積極的に発信していただき、本市が「住みたいまち」、「住み続けたいまち」として高い魅力を有していることを、市内外の皆様に再認識していただけるよう、「リ・ブランディング化」を図り、さらなる移住の促進につなげてまいります。

 本市の主要産業である電子部品デバイスを中心とした製造業は、高い需要を背景に、生産量も堅調に推移していると伺っているところであり、こうした状況を踏まえつつ固定資産税の減額措置や、雇用奨励補助金の交付など「工場等立地促進条例」により、生産力の向上に向けた取り組みを促すとともに、この3月中に取りまとめる「産業団地適地調査」の結果を踏まえ、雇用の創出につながり、外貨獲得が見込まれる地域産業の集積に努めてまいります。

 次に、農林水産業についてであります。

 令和4年7月に施行された「みどりの食料システム法」により、2050年までに化学肥料の使用量を30%低減する目標が設定されております。市においても、今後、これらの目標達成に向けた環境負荷低減などに視点を置いた農業施策への取り組みを進めてまいります。

 米政策においては、2年連続の不作や主食用米の需要量減少など、大変厳しい状況が続いておりますが、水田活用米穀や高収益作物へのさらなる転換を促しながら、需要に応じた「売れる米づくり」を推進するとともに、地域資源である堆肥やもみ殻の活用など、地球環境に配慮した資源循環型農業を支援してまいります。

 園芸作物につきましては、「秋田鳥海りんどう」や「アスパラガス」などの高収益作物の振興を図るとともに、「シャインマスカット」や「タマネギ」などの大規模な団地整備に支援を行い、複合型生産構造への転換を推進してまいります。

 担い手の確保・育成につきましては、スマート農機など省人・省力化につながる農業機械の導入支援を行い、次世代の担い手育成を図ってまいります。

 また、新規就農者に対しては、技術習得の研修支援を継続しながら、就農に向けた資金面での支援を図るとともに、農業体験や移住就農に関する情報の発信など、本市の農業の魅力を効果的にPRして、市内外からの農業の人材確保と定着を進めてまいります。

 畜産につきましては、安定的、持続的な生産体制の構築に向けた取り組みへの支援を継続するとともに、今後の資源循環型農業の拡大に不可欠な堆肥施設の基盤強化を進めてまいります。

 秋田由利牛振興につきましては、関係機関と連携した、販路拡大とイベント等でのプロモーション活動を進めてまいります。

 次に、農業生産基盤整備につきましては、本荘地域松ヶ崎地区と矢島地域小板戸地区の県営ほ場整備事業を継続的に促進するほか、鳥海地域の鳥海川内地区及び笹子地区の事業採択に向け、引き続き調査・計画策定を推進してまいります。

 また、ため池の施設整備や、使用されず決壊のおそれのある「防災重点ため池」の廃止を計画的に進め、日本型直接支払制度による、農業生産活動への支援を継続してまいります。

 森林・林業につきましては、森林環境譲与税を活用し、再造林など森林整備を進めるとともに、近年急拡大している松くい虫被害の対策などを進めるほか、森林が持つ多面的な機能の維持・増進を図りながら、地域林業の振興に努めてまいります。

 昨年はクマの出没が過去最多となり、市街地周辺でも頻発していることから、引き続き、迅速な出没情報の発信や、人との生活圏の境界である緩衝帯整備に努めるほか、ICT活用等についての有用性について検証を進め、クマ対策の充実強化を図ってまいります。

 水産業につきましては、西目及び道川漁港施設の長寿命化を図るため、補修整備を計画的に実施するとともに、漂砂対策として航路等の浚渫を行うなど、漁業活動に支障をきたすことのないよう、適切な漁港管理に取り組んでまいります。

 

 3点目は、「誰もが安全安心に暮らせるまちづくり」であります。

 まず、新型コロナウイルス感染症対策につきましては、約3年間にわたり必要な医療体制を確保していただき、そして、ワクチン接種に献身的にご協力いただきました医療関係者の皆様に衷心より感謝申し上げます。

 今年4月より特例臨時接種から定期接種へと移行しますが、引き続き、希望者が不安なく接種を受けられるよう、由利本荘医師会などと調整をしながら万全に対策を行ってまいります。

 健康づくりにつきましては、令和6年度からスタートする「第3期健康由利本荘21計画」と「第2期自殺対策計画」に基づき、日々の健康管理や食生活の改善、運動の習慣化など健康づくり施策を総合的に推進し、健康寿命の延伸と、命を守る自殺対策の取り組みを強化してまいります。

 また、来年度からの新たな取り組みとして帯状疱疹の発症と重症化を予防するため、満50歳以上の市民の方々を対象に帯状疱疹ワクチンの接種費用の一部を助成してまいります。

 さらに、軽・中度難聴者の生活の質の向上を図るとともに、認知症予防の観点から、補聴器の購入に係る経費の一部を助成してまいります。

 

 地域医療につきましては、引き続き救急告示病院への運営費支援や医師の確保に努め、市民の皆様が安心して診療を受けられるよう充実した医療提供体制を維持してまいります。

 地域福祉につきましては、ひきこもりや複雑・困難化した福祉問題に対応するため、多職種連携による、包括的な伴走型支援を継続するとともに、

 新たに、成年後見制度普及の司令塔となる中核機関を設置し、認知症患者や障がい者への支援を充実させてまいります。

 高齢者福祉につきましては、高齢者の5人に1人が認知症患者になると推計されている令和7年を見据え、令和6年度からスタートする「第9期高齢者保健福祉計画」に基づき、地域包括支援センターの拡充や介護サービス事業所の開設など、持続可能な支援体制の整備を図るとともに、「地域包括ケアシステム」の、更なる深化に向けた取り組みを強化してまいります。

 次に、市民の皆様の快適な生活を支え、活力あるまちづくりと地域経済の活性化につながる、道路等をはじめとする高機能な生活基盤を効果的、持続的に整備を進めてまいります。

 道路整備につきましては、本荘東中学校や、新たに整備される本荘東小学校の児童生徒の通学路となる「市道鶴沼薬師堂線」の安全で円滑な通行を確保するため、道路拡幅と歩道設置に向け、用地の取得に着手してまいります。

 また、市道及び橋梁などの施設につきましては、長寿命化修繕計画に基づき、持続性の向上につながるインフラのメンテナンスに取り組んでまいります。

 羽後本荘駅周辺整備事業につきましては、東口広場へのアクセス道路である「停車場東口線」の整備を推進し、駅の東西間を往来できる自転車・歩行者ネットワークの構築を図ってまいります。

 住宅施策につきましては、住宅リフォーム資金助成事業を継続し、市民の皆様の居住環境の向上とともに、地域経済の活性化につなげてまいります。

 市民生活に欠くことのできない上下水道事業とガス事業につきましては、安全な水や都市ガスの安定供給と処理施設の維持管理など持続可能な事業運営を目指してまいります。

 水道事業につきましては、安定水源として期待される鳥海ダムの工期延長や、物価高騰による建設コストの上昇により、整備計画の見直しを行っているところであります。

 また、一番堰まちづくり事業区域へ給水するための配水管を整備するとともに、水道管網を構築し、安定供給を図ってまいります。

 下水道事業につきましては、処理施設における維持管理経費の軽減を図るため、令和8年度の完成を目指し、西目処理区の本荘処理区への統合に向けた事業を実施してまいります。

 ガス事業につきましては、一番堰まちづくり事業区域にガス管を整備し、今後建設が予定されている施設へ都市ガスを供給できるよう手当てするとともに、熱源利用の選択肢を拡げ、経営の安定化につなげてまいります。

 地域公共交通につきましては、地域間を結ぶ幹線路線である羽後交通の路線バスや鳥海山ろく線の維持を図っていくほか、地域内路線であるコミュニティバスについては、実情に応じた運行形態への再編を進め、AIオンデマンド交通の導入などを検討してまいります。

 新ごみ処理施設につきましては、敷地造成とアクセス道路の整備を進めるほか、今後、施設整備や運営を担う事業者の決定に向けた準備作業を進めてまいります。

 なお、最終的なスケジュールについては、先に説明した概算事業費を基に、中長期的な財政運営に与える影響などについて、十分検証した上で、方向性を決定したいと考えております。

 元日に能登半島を襲った地震と津波、そして、局地的な豪雨や豪雪などの自然災害に備え、本市でも総合的な訓練を行いながら、市民の皆様に災害発生時の対応を周知するとともに、関係機関との連携を深めてまいります。

 さらに、「むこう三軒両隣・たすけあい事業」や「自主防災組織活動促進補助金制度」などにより、自助・共助意識の一層の醸成と地域防災力の向上を図り、担当職員が積極的に自主防災組織等の総会や出前講座などに足を運び、市民の皆様に向けて、想定される災害の種類や危険箇所、災害発生時の基本的行動などを周知するほか、緊急時の情報伝達手段の強化として、引き続き、消防・防災メールなどへの登録を呼びかけてまいります。

 また、市街地の内水浸水被害の軽減を図るため、内水浸水想定区域図を作成し、地形情報や浸水実績を活用した情報提供を行い、今後、その対策や整備基準を盛り込んだ雨水管理方針の策定に取り組んでまいります。

 さらに、いざという時の防災力や消防力の向上を図るため、消防車両の更新や消防団格納庫の建て替え、耐震性貯水槽の整備、消防団員の確保、安全装備品の配備など、消防施設や装備の充実強化に努めてまいります。

 地域の元気の創出や課題解決に向けた取り組みにつきましては、各地域の特性を踏まえた民間団体の主体的な取組みを支援する「地域づくり推進事業」や「ともしび元気プログラム補助金」を継続し地域の賑わい創出につなげてまいります。

 さらに、総合支所単位を基本に市内8地域において独自の事業を提案し実践する「元気な地域づくりチャレンジ事業」では、観光名所等のデジタル情報の提供や駅舎を活用した賑わいづくりなど、それぞれの地域の特色を活かした施策を展開してまいります。

 情報発信につきましては、市公式ホームページを情報発信の中核と位置づけ、誰もが使いやすく、多くの利用者から評価をいただける、「日本一のホームページ」づくりに取り組むほか、広報紙やSNS、ケーブルテレビなど、それぞれの情報発信媒体の特徴を活かしながら、市内外に本市の魅力が広く伝わるよう努めてまいります。

 これらの施策を推進するにあたっては、デジタル化やゼロカーボンの取り組みと行財政改革の徹底と効率的な行財政運営を念頭に置いて取り組んでいくことが重要であります。

 まず、人口減少社会に対応しつつ、市民の皆様の利便性向上と業務の効率化に直結するデジタルの力を活かした取り組みを推進してまいります。

 その一環として、全国初となる「マイナンバーカード利活用宣言」を行った本市では、福祉医療費受給者証や図書館カードとしてマイナンバーカードの機能拡大に取り組むなど利活用促進に、全力で取り組んでまいります。

 また国が進めるデジタル田園都市国家構想交付金事業を活用しながら、「移動市役所」や「書かない窓口」の導入などにより、一層の行政手続きの効率化と迅速な市民サービスの提供を図ってまいります。

 ゼロカーボンの取り組みにつきましては、昨年2月に宣言を行った「ゼロカーボンシティ」の実現に向けて、各施策に脱炭素社会の実現に向けた取り組みを盛り込んでいくほか、市民の皆様や産業界、各種団体等と連携しながら、温室効果ガスの排出抑制に向けた取り組みを進めてまいります。

 行政改革の推進につきましては、「第四次行政改革大綱」や「公共施設等総合管理計画」に基づき、「持続可能な行財政運営の推進」を基本方針に、公共施設の最適化など各分野における改革を推進するとともに、第三セクターにつきましても、「第三セクターの見直しに関する指針」に基づき、抜本的な見直しを進めてまいります。

 職員の育成につきましては、市民生活を取り巻く社会環境の変化に伴い、多様化、高度化する市民ニーズや地域課題に迅速かつ的確に対応するために、政策形成能力などの専門性に、広い視野と市民感覚をあわせもつ職員を育て、その能力を最大限に発揮していくことが重要であることから、計画的な職員研修に加え、国、県及び民間企業との人事交流、意欲的に自己研鑽に取り組む環境の整備により、職員の資質向上を図ってまいります。

 

 最後に、私は、政治信条である「市民生活がいちばん」を胸に、日々市政運営に懸命に取り組んでいるところであります。

 昨年は、人と人が直接会うことで、相手を「想い」信頼関係が深まるものだということを改めて実感したところであり、コミュニケーションの大切さを再認識した年でありました。

 来年3月には合併して20年の節目を迎えますが、今年の干支である甲辰(きのえ・たつ)にあやかり、「活気あふれ、力がみなぎる」飛躍の年となるように、これまでの枠に縛られず、新しい発想に基づき、新たな由利本荘市の姿を創造する想いで市政の課題に臨んでまいりたいと考えておりますので、議員各位をはじめ、市民の皆様のご理解、ご協力をお願い申し上げます。

 

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