3.各世帯(家)での準備
(1)各家々では祭典を迎える準備にとりかかる。
 御神輿の通る道路の家の内外を清掃して清め、宵宮の9日の午後、軒先には家紋を染抜いた暖簾を下げ、同じく家紋を入れた長灯篭をつるし、軒端には若者衆の配った軒花をさす。玄関又は道路に面しお座敷を開き、年に一度この八朔祭りの為に備えた八脚を取り出し祭壇を作る。(八脚の代りに机で祭壇を整える家もある)
 祭壇には、御幣・御燈明・御神酒・果物・スルメ・昆布等を供え、初穂も準備する。さらに祭壇の後方には屏風を立て、活花や鉢物などを並べ神輿の御通りに備える。
 かつての町家はその大部分が切妻妻入りの造りで、舗装されない砂利道には川砂や汚れ気の無い土(矢島ではザクという)で「盛り砂」をして各家々で神の道を作ったものだが道路が舗装されその後片付けが大変苦労なことからその風習も姿を消してしまった。また、住宅も各々個性的な構造で新築され、切妻妻入りの造りも少なくなって来た。
家紋入りのれん 家紋入りの御神灯 盛砂をして神輿を迎える
(2)山車の花・ねり子に配る花の準備。
 六丁の若者衆の大きな収入源となっているのは山車の「花」で、お祭りの当日六町内各家々に、花係の若者衆と、主として中学生の男子が丁内若者衆の半天を着て、「祭礼田中町若衆」とか「舘町青年会」等とゴム印を押した寸志(若者衆は花と呼んでいる。)を配ってくるので、それに上げる「花」六丁分と、山車を引く綱につかまって町をねり歩く仮装した幼児(ねり子)にお祝いとして上げる「花」(ねり銭)を準備する。このねり子銭はその家によって数が異なる。この花はお祭りの当日、家の前を山車を引いて通るねり子達一人一人に手渡す。ねり子達はいただいた「お花」をその為に準備して腰に下げて来た小袋に入れて歩く。特に小さい幼児には大人が付き添ってついて歩く。
神輿を迎える祭壇 各家の祭壇かざり お花の準備
(3)ねり子の準備
 お盆が過ぎると、町の衣料店の店頭には子ども用のお祭り半天などが通路側にさげられ、お祭りムードを盛りたてる。
 特に六丁内各家々で、小学校に入る前の子どものいる家庭や、外孫のいる家では、その子の一生に一度は着飾ったねり子姿でお祭りに参加させようと祖父母やその親が夢中になるのも八朔祭りの特色のひとつであろう。
 

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